旋律は春雷の如し

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それからの時間を朝倉は、邪魔にならぬよう置き物として過ごした。 何テイク録った。とか、そういう表現はできない。途中休憩を入れながらだが、2時間も掛けた音録り。 基本的に遥の音にリズムを任せ、必要に応じてメロディ・ラインを乗せていく。 てっきり真矢が仮リードを入れて遣すのだと思っていたが、極1部に(かなりテキトウな)リフが入っているだけだ。 これが彼女達の創り方。 過去の曲でも奏の名前は、作曲者のクレジットに連名されている場合が多い。 特に珍しいやり方でもないが、5年ぶりで、顔すら合わせられない録音でも踏襲するか…… よほど信用していなければ、もっと完成形に近いモノを送って来るだろうな。不仲とか、考え過ぎだったようだ。 最後にソロ・パートの即興プレイ。1番時間を費やすのかと思ったが、それこそ1発録り。 窓越しに男と合図を交わした奏は、録音作業を終えた。
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