旋律は春雷の如し

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奏はまじめな顔で、質問を返してよこす。 「人にも依るけど、どっちのギターが扱いやすい?」 やはりソコか。一般的に硬く軽い音の出るストラト。周りに合わせて音を操作する前提なら、使い勝手に優れている気はする。 作りも小柄な女性に向いているし、仕事の道具としてセッション・ミュージシャン‘奏’が使うのは分かる。 でも、堕天使の看板ギタリストとして弾くなら…… 「言ってる意味は分かりますけど、例えば昨晩。アンコール演奏が唯一、堕天使を彷彿させるスタイルで、他は……」 食い下がった朝倉に対し、奏は人差し指を唇に当てると、謎の言葉を発した。 「アレを見たなら忘れてね」 「はい? 一生涯、脳裏に焼きついて忘れられないですよ?」 「なら、みんなに黙っていてくれるだけでいい」 「……」 「お願い。朝倉」
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