旋律は春雷の如し

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機内経過は省略し、場面を日本へと移動しよう。 成田の税関を抜け、無事に帰国した朝倉は嵩子に電話を掛けた。 時刻は間もなく夜の8時。 ---「はい」 「着きました。奏からのデーター、無事に届きました?」 昨日。と、いうべきか時差の関係で微妙だが、録音データーは一緒に作業していた男が整理して、嵩子のパソコンに送ってくれる手筈になっている。 「ああ、今朝送られて来た。昼間は時間が取れなくてな。ちょっと前から確認中だが、問題無さそうだ」 「そうですか。スケジュール調整の件も順調です。俺も聴きに行って構いませんか? 事務所ですよね」 短い間が有って。 「いや、9時に真矢のヴォイスが終わる。迎えに行って、飯でも食わせてやってくれ」 「いいですけど……真矢さんも早く聴きたいんじゃ?」 今度は長く間が空いた。 おそらくは遥と一緒で、何か相談した後に予定を決めたようだ。 「明日は午前中からスタジオを借りてある。今日は仕事が残っているから、真矢は明日にしよう。朝倉さんも、早く休んでくれ」 「分かりました」 電話を切った朝倉は頭を掻いた。 奏も嵩子も、なんだろ……な。
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