旋律は春雷の如し

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『私以外に、歌えて堪るか』 そう思って歌っていたのが、みんなと演っていた頃の曲。 そのくらいの意地が無ければ、奏のギターに飲み込まれる。 昨晩のたかこちゃんは、疲れて元気が無かった訳じゃない。 明日は頑張ろうぜ! みたいな発言を真に受けて、スヤスヤと寝ていた私は大馬鹿野郎。 2人は奏が送ってよこした音を、既に聴いているはずだ。 飛び起きた私は、携帯を掴み朝倉さんに電話した。 ---「おはようございます。まだ早くないですか? ああ、朝飯買って来い。でしょ?」 余裕の身支度をしてから、予定通りに迎えに来るつもりでいた彼に「マッハで来い」と告げ、私自身もシャワー・ルームに駆け込んだ。 あの2人は今頃、絶対に秘密特訓している。 秘奥義(カラスの行水)を使用した私の姿が、マンションの外で確認されたのは、それから10分後のことだった。
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