旋律は春雷の如し

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貸しスタジオを目指す車内、朝倉さんは時計を指して早いだの何だの言っている。 この隙に解説しよう。 たかこちゃんは素早いからな。朝倉さんは、とっくに引越し済みだ。 私のマンションと事務所の中間辺りで、どちらにも徒歩5分。 私の部屋から双眼鏡で良く見える。 (注)覗きは犯罪です。 ま、それは置いといて、大事な話をしなくてはならない。 「なぁ、朝倉さん。正直どう思った?」 「そうですね。やんちゃな女子に見えますよ」 『その話題も脇に置けっ!』 もっと慣れたら声に出して突っ込むのだが、まだ今は心の叫びだ。なにしろビビリで人見知りでシャイだからな。 「そうじゃなくてさ、私達の出来を見てどう思った? 奏はアレを聴いて、どんな顔してた?」 『あー』って感じの納得の表情を浮かべ、若干考えて返事が発せられた。 「堕天使のコピー・バンドみたいでした。あくまで趣味の域の、素人が集まった感じの」 ……も もう少し歯に衣きせてくれないかな。 「でも」と、言葉は続く。
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