逡巡の歌姫

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それにしても、私…… 『何やってんだろ?』 2年のブランク。 たった2年。 昔、お世話になったプロデューサーは、悲しい顔をして席を立った。 「コケる話には乗れないな。俺は仕事でやっているからね。今の真矢からは、残念ながら何も感じない」 グサッ 立ち寄ったライブハウス。懐かしいマスターの笑顔も、どこか寂しそうだった。 「すっかり落ち着いたねぇ。大人になって、美人にも磨きがかかったよ」 グサッ グサッ ロックやっててさ、落ち着いたーとか、大人になったーとか言われたら、なんかもう風景が真っ白になるよ。 周囲の雑音は、途絶えることがない。 「オーラなくなったな」 「やっぱアレ、本人だったんじゃね?」 「ほとばしるエナジー。真矢無双消滅」 「美人は美人だけど、今更感たっぷり」 「ネームバリューがあるだけに、落ち目は扱いづらいよね」 「昼メロ出るらしいぜ。ロックの魂売ったな」 ヒソヒソ…… ヒソヒソ……
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