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テーブルの隣席(コーナー部分だが)に座ったTAKAKOがサングラスを置いた。
さすがに現役時代とは趣が違う。大人の雰囲気を漂わせる事業家。丁寧ではあるが、決して安目は売らない毅然とした態度。
「初めまして。笹木嵩子です」
ここで言葉は止まったが、後の沈黙が持つ質問の意味くらいは読める。
「堕天使のTAKAKOさんですね。驚きました」
「分かりますか」
少し微笑んだようだ。
「よく聴いていましたし、コンサート行ったことも」
遠い目をしたTAKAKOは、その目を閉じ頭を垂れた。
「うちの所属タレントが、たいへんなご迷惑をかけて、申し訳ありませんでした」
「あー」
とりあえず、それしか言葉が出なかった。考えてみればマトモな切り出しだが、そう出て来るとは思っていなかった。
頭を上げようとしないので困ってしまう。何か言わないと。
「事情はだいたいご存知で?」
「はい。本人から報告を受け、少し調べさせて頂きました」
ますます分からない。本人ならキャバ嬢に化けて、クルマに飛び込んで来ました。
そう言いたいのをグッと堪え、タイミングの良いノックの音にフッーと息を吐く。
TAKAKOが頼んだであろうコーヒーが出て来た。いや、頼まなくても出るものかな。
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