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「……なんだ、あれは」
少年に聞かれたくないのか、友人、葵は声をひそめて話し掛けてくる。
「家政婦のバイトでも雇ったのか?」
「違うよ。海……砂浜で拾ったんだ」
「警察には届けたんだろうな?」
「いいや、届けてない」
「な……」
怒声を上げかけた葵は、コーヒーカップを手に現れた少年の姿を認め、口を噤む。
どうぞ、とジェスチャーでコーヒーを勧める少年。
ソーサーには、スティックシュガー載せられている。
「……ありがとう」
葵が礼を言うと、少年は再び微笑を浮かべて、私の隣に腰を下ろした。
『きょう、でかけるの? おれ、るすばん?』
メモに書かれた文字を目で追い、頷いてみせる。
「仕事だからね……遅くなるかも知れないから、昼食と夕飯は要らないよ。いくらか置いていくから、セイくんも出掛けて構わないからね」
『じゃあ、あしたのぶんのしょくざい、かいにいく。りくえすと、ある?』
「ハンバーグがいいな」
『りょうかい』
にっこりと笑って、私がセイと名付けた少年は、席を立った。
冷蔵庫の中身を確認しに行くのだろう。
「カイ」
葵が、咎める様な口調で私の名を呼んだ。
「詳しいことは、車で話すよ」
「……解った」
私の言葉に、苦虫を噛み潰したような顔をして、葵はそれ以上何も聞いては来なかった。
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