大路 海陽(2)

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「……なんだ、あれは」  少年に聞かれたくないのか、友人、葵は声をひそめて話し掛けてくる。 「家政婦のバイトでも雇ったのか?」 「違うよ。海……砂浜で拾ったんだ」 「警察には届けたんだろうな?」 「いいや、届けてない」 「な……」  怒声を上げかけた葵は、コーヒーカップを手に現れた少年の姿を認め、口を噤む。  どうぞ、とジェスチャーでコーヒーを勧める少年。  ソーサーには、スティックシュガー載せられている。 「……ありがとう」  葵が礼を言うと、少年は再び微笑を浮かべて、私の隣に腰を下ろした。 『きょう、でかけるの? おれ、るすばん?』  メモに書かれた文字を目で追い、頷いてみせる。 「仕事だからね……遅くなるかも知れないから、昼食と夕飯は要らないよ。いくらか置いていくから、セイくんも出掛けて構わないからね」 『じゃあ、あしたのぶんのしょくざい、かいにいく。りくえすと、ある?』 「ハンバーグがいいな」 『りょうかい』  にっこりと笑って、私がセイと名付けた少年は、席を立った。  冷蔵庫の中身を確認しに行くのだろう。 「カイ」  葵が、咎める様な口調で私の名を呼んだ。 「詳しいことは、車で話すよ」 「……解った」  私の言葉に、苦虫を噛み潰したような顔をして、葵はそれ以上何も聞いては来なかった。
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