義兄の友人(2)

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 友人の弟くんが姿を消して、一月が経過した。  遺書はそのまま遺族、友人の手に渡り、友人の手で処分されてしまった。  葬儀は行われなかった。  生きている可能性があるなら、と義母である人が反対したのだと言うが、友人も頑として頷かなかっただろうことは、安易に想像できる。  陳列棚に商品を補充しながら、こっそりと溜息をつく。  去年の夏からバイトを始めた大型スーパー。  実は弟くんが飛び込んだ断崖絶壁に程近い場所にある。  家に近い場所よりは知人に会いにくいだろうと選んだ場所なのに、こんな事なら家の近所のコンビニにしとけばよかったな、と思う。  すべてを並べ終え、段ボールを潰して立ち上がる。  子供が走り回っているのか、騒ぐ声と、それを窘める声。  それに苦笑して、段ボールを抱えたところで、ガシャン、という大きな音が響いた。  何事か、とあたりを窺う。  泣きはじめた五歳程の子供と、倒壊した缶詰に潰されるようにして埋もれている手のような物が見えた。  段ボールを放り出し、その現場へ向かう。 「大丈夫ですか!」  野次馬と、ぼく以外の店員も駆け付けた。
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