少年A(3)

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 待て、と言われて振り返ると、知らない人が痛ましい表情で追い掛けてきた。  相手は 「君、むなかた おうじの弟だよね?」  と尋ねてくる。  名前に、全く聞き覚えがない。  メモに『しらない』と書いて見せれば、相手の眉間にシワが寄った。 『おれ、このきんじょのおうじ かいようってひとといっしょにすんでる。むなかた おうじなんてしらない』  説明不足だったか、と書き加えてさらに突き付けた。 「うそだ」 『うじゃない。ほんとにしらない』 「いさな君でしょ?」 『ちがう。おれ、せいってなまえ』 「なんで喋らないの?」 『こえ、でないから』  ここまで書くと、相手がぐ、と息をのんだ。
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