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待て、と言われて振り返ると、知らない人が痛ましい表情で追い掛けてきた。
相手は
「君、むなかた おうじの弟だよね?」
と尋ねてくる。
名前に、全く聞き覚えがない。
メモに『しらない』と書いて見せれば、相手の眉間にシワが寄った。
『おれ、このきんじょのおうじ かいようってひとといっしょにすんでる。むなかた おうじなんてしらない』
説明不足だったか、と書き加えてさらに突き付けた。
「うそだ」
『うじゃない。ほんとにしらない』
「いさな君でしょ?」
『ちがう。おれ、せいってなまえ』
「なんで喋らないの?」
『こえ、でないから』
ここまで書くと、相手がぐ、と息をのんだ。
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