少年A(1)

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 遺書には、あいつへの遺恨だけ。  再婚して、息子に構わなくなった母にも、血の繋がっていない義父にも、遺す言葉なんてない。  眉目も、外面も成績もいい、オレに対してだけ暴力的な義兄が居れば、なんの取り柄もないオレなんて、要らないでしょう?  きっと悲しむ人なんて居ない。  なんの未練もありはしない。  断崖絶壁、下は荒れ狂う海。  うまくいけば、魚の餌くらいにはなれるかな。  靴で遺書を抑えて、笑う。 「バイバイ」  助走をつけて、海へと飛び出した。
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