大路 海陽(1)

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 生きながら、死んでいた。  一年前に最愛の妻を、病気に取られてしまった。  懸命の闘病にもかかわらず、あっさりと妻は命を落とした。  骨になってしまった彼女を、望み通りに海へと還し、私は生き甲斐をなくした。  それでも、周りに支えられて今までなんとか生きてきた。  喪失感を胸に抱えたまま。  妻を亡くして、丁度一年。  彼女が還った海に、私も還ろうと足を向けた。  生きながら、死んでいた。  彼と出逢うまでは。
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