大路 海陽(1)

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 目を覚ますまでに三日、少年は眠ったままだった。  医者に見せるべきだったのかもしれないが、呼吸は自発的にしていたし、日に日に顔色もよくなっていた。  目を覚ました彼は、声と記憶を失っていた。  三日前は微かだけれど声は出ていたのに……  覚えているのは、『死』の事だけ。  死にたくないと言ったことも、覚えていないのか。  悲しくなって、少年を抱きしめる。  死にたいかと尋ねれば、少年は首を横に振った。  恐らく、記憶がないおかげで、何故死にたかったのかも曖昧だからだろう。  三日前のあれが本心なら、死にたくなるような環境に戻すわけには行かない。  たとえ記憶が戻ろうとも。  この少年は、海に眠る妻が、私に生き甲斐を与えるために遣わしたに違いない。  一緒に暮らすことを提案すれば、彼は頷いてくれた。  私は新しい家族を得た。
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