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目を覚ますまでに三日、少年は眠ったままだった。
医者に見せるべきだったのかもしれないが、呼吸は自発的にしていたし、日に日に顔色もよくなっていた。
目を覚ました彼は、声と記憶を失っていた。
三日前は微かだけれど声は出ていたのに……
覚えているのは、『死』の事だけ。
死にたくないと言ったことも、覚えていないのか。
悲しくなって、少年を抱きしめる。
死にたいかと尋ねれば、少年は首を横に振った。
恐らく、記憶がないおかげで、何故死にたかったのかも曖昧だからだろう。
三日前のあれが本心なら、死にたくなるような環境に戻すわけには行かない。
たとえ記憶が戻ろうとも。
この少年は、海に眠る妻が、私に生き甲斐を与えるために遣わしたに違いない。
一緒に暮らすことを提案すれば、彼は頷いてくれた。
私は新しい家族を得た。
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