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「しゅうくんは?」
“しゅうくん”
その温かな響き。
足らない言葉も、あの頃のまま。
「仕事?俺は商社に勤めてるよ」
「えー、すげぇな」
「ぜんっぜん凄くないよ。…聡くんは?」
「……おれ?」
その時スッと、貴方の視線が俺から逃げた。
「…俺は…なんも」
「何も?だってさっき明日も仕事だって…」
だから帰るって言ってたじゃない。
「あれは…はやく帰りたかったから」
小さな声で困り眉のまま、また笑う。
「あ…そうだったんだ……」
「うん…」
そしてそのまま黙ってしまった。
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