黒猫,出逢うこと

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……なんて。 入学式サボった俺が云うことじゃないけどな。 「あー……痛ぇ」 あまりの痛さに眉を顰めながら顔のすぐ傍にあった眼鏡をかけ,身体を腕で支えつつベンチから起こした。 俺は,自分の顔をあまり好ましく思っていない。 とても見れたものじゃないと云うほど不細工でもなくて,むしろかなり上位の方に入るだろう。 そのおかげで嫌な思い出がたくさん出来た。 つまり。 ナンパされるということが多い。 しかも,男に。 男に好かれても,何も嬉しくないっての。 いい加減気付けよ。 なので眼鏡,という訳だ。ちなみに伊達で,しかも厚いレンズがついた黒縁のやつ。 今の俺は完璧なオタクだ。 望んでやっているから別に不満はない。 「っと,時間時間」 とりあえず,教室だ。 これ以上遅刻したらさすがにヤバイ。 俺は覚束ない足取りを叱咤して,校舎へと向かって行った。 .
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