黒猫,出逢うこと

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「……ッ!」 ハッと覚醒する。 心臓が全力疾走したときのようにばくばくと鼓動を打っていた。それに比例して息が荒くなる。 「はっ,はっ……」 正常に戻そうと深呼吸を繰り返していると,気持ちの悪い汗がこめかみを流れていった。制服の袖で拭おうとしたところで,俺はようやく思い出す。 「入学式,サボったな」 今日はここ天ヶ挟学園で入学式があり,生徒と教師は必ず出なければならないのだが――俺は中庭らしき所のベンチで寝てしまったため,行けなかったのだ。 ――それもこれも全部この中途半端な天気が悪い。 俺は空を睨んだ。 今にも雨が降ってきそうなどんよりした空模様は,灰色に塗り潰されている。 雨は,嫌いだ。 あのときのことを思い出させるから,嫌い。 .
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