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「てめぇ……人様にペットボトルぶつけといて謝罪すら無しか? あぁ? それとも何だ,自分は悪いことしてねぇって思ってんのかよ」
吐き捨てるように云われ,木の影から出て来たそいつは胸座を掴んでくる。こめかみに青筋が浮かんでいるのを見て,本気で怒っているのが分かった。俺の怒りは既にどこかへ消え去っていた。
別に恐怖とか感じているわけじゃない。
「…………面倒くさ」
「あ?」
ぼそりと漏らした言葉を聞かれていたようで,そいつの口元が軽く引き攣る。
あ,ヤバ。
……と思ったときには時遅く。
更に胸座を引き寄せられ互いの吐息がかかるほどにまで顔を近付けられた。
いやいやいや!
近いッ! 顔が近いですから!
こういうのは男にされても全く嬉しくも何ともねーつの!!
「舐めてんの?」
「は……? いや,じゃなくていいえ。すいませんでした,先輩。まさかあんなところに人がいて,当たると思わなかったものですから」
ネクタイの色が緑なので,おそらく三年なのだろう。
慌てて敬語を使う。
面倒事は増やしたくないんで。
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