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一通り式場を案内した後 、パンフレットを前に式 場の説明などを行う。 ここで式をあげようって 思ってもらうための大切 な工程。 『それが、まだ全然決め てないんです』 今にも消えてしまいそう な声で新婦さんになる予 定の女性が言った。 「あ、いいんですよ。今 日は説明だけですから」 安心させるように笑顔を 向けるけど、常に目が不 安そうに泳いでいる。 『すみません。二人で来 る予定が私一人になって しまって。私一人でも式 場だけでも決めていいっ て言われてはいるんです けど。やっぱり今日中に 決めないといけませんか ?』 「式の予定もまだ先のよ うですし、大事なことで す。一度きちんと話し合 ってからでいいですよ」 今日中に琥珀は契約を決 めるつもりだったから、 怒られるだろうなとか一 瞬思ったけど無視するこ とにした。 「すみません。だけど、 彼は多分どっちでもいい って言うと思います」 結婚間近の女性には不釣 り合いな憂いの表情が浮 かんだ。
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