台風②

2/8
前へ
/298ページ
次へ
 ジョイは高架下に近いところにある。暴風がコンクリートに当たって渦巻いて襲ってくる。  「だいじょうぶ?」  果歩の手をつかんだ手があった。  前が見えなくて、一瞬つかんでくれた手が誰の手か分からない。 ジョイの店の前で、慎が果歩の手をつかんだと知って、ほっとした安堵(アンド)感が体中に広がる。  (この人は店の外で待ってくれてたんだ)  雨に濡れた慎のシャツは透けて中のランニングが丸見えだ。  つかんでくれた慎の手もひどく冷えていた。  「中に入ろう」  手をつないでジョイに入る。  店内の冷房のひんやりとした空気に包まれたら、急に寒気を覚えた。  店の中は同じように嵐に遭遇した人でいっぱいだ。  慎が前もってとっておいてくれた席に着く。途端に緊張が解けて、果歩はぐったりと頭をテーブルにもたれかけた。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加