台風②

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 慎の瞳だけでなく、さらっとした髪の感じ、口元、青いシャツから透けている腕の形、  全部、ぜんぶ陵に見えてくる。  陵の生存を知らなかった悔しさをどこにぶつけてよいのか、果歩は途方にくれた。  「知らせることができない事情があるんです」  「今は教えてもらえるの?」  突っかかるような言い方しかできない。大人の余裕なんてない。嵐のせい?  (ちがう)    (陵の事情を知らされなかったことがショックなんだ)    でも泣きたくない。パンダ目になりたくない。悔しいから果歩は歯をくいしばり我慢する。  薬を飲んだから、大丈夫。  きっと、だいじょうぶ……。  「その様子だったら、少しずつ話したほうがいいですね」  慎は果歩を気遣うように言う。 「ううん」  気遣いなんて要らない。
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