♥激怒♠

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   そうですか、とも言えないではないか。  「あやしいですね」  「じゅうぶん、あやしい」  「---兄みたいに大手に勤めたくなくて」  「え?」    この不況の中、大手狙いの人が多いというのに。果歩の前に置かれた名刺には、ただ会社の名前。  「兄は仕事で行ったNYでテロにあったんです。そして」  (その続きを聞きたいんだよ)  (そして、どうなったの?)  陵が9・11のテロに遇ってからどうなったのか、慎はどうしても話そうとしなかった。  嵐がやむまで、確かにゆっくりできそうだから、果歩は聞き出してやろうと粘った。  しかし、慎は頭を下げるばかりで、「待ってくれ」の一点張りだった。  「LOVE LOVE LOVE」が鳴る。  (もう!)  大事なところでメール着信音。苛立ち、それでも見ると隼人だった。
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