《疑惑》

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 白い磁器の皿にビーフシチューのこげ茶色が映える。ほかほかのシチューを目の前に、隼人の表情はゆるむ。  「いただきまーーーすっ」  元気よく言って食べ始める。  (かっこむ、という感じ)  電車待ちで腹ペコだったのだろう。勢いよく気持ちよく、シチューは隼人のおなかに入っていく。  せっかちなのは食べ方にもはっきり表れていて、果歩は思わず吹き出してしまった。  ほんの数分で食べきった隼人がお茶を飲みつつ果歩に訊く。  「今日、仕事からの帰り、ほんと大丈夫だった?」  「あ、えっとね」  「んん?」  「ジョイに寄ってから帰ったの」  「やっぱこっちも台風、凄かったんだな。雨宿り?」  「ううん」  (ちゃんと言わなくちゃ)  「沼田さんと会っていたの。陵くんのことで」
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