♠弟

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   プップップップッ……。  呼び出し音を緊張して聞くことなんて、この携帯からかける通話ではない。  「はい、沼田です」  (やっぱり、陵くんの実家だ)  ひとまずほっとする。  ここからが大事なのだ。一呼吸おいてから、果歩はゆっくりと噛みしめるように言った。  「沼田陵さんのお宅ですか?」  相手から、警戒するような戸惑うような空気が感じられる。  (警戒?)  「……そうですけど」  「ご在宅ですか」  「今は……出てますが……」  (やっぱり)  やはり陵くんは生きている。  「陵さんはそこに住んでいるんですね?」  語気が強くなってしまった。冷静に話そう。たくさん聞きたいことがあるのだから。  相手は明らかに警戒している声で答えた。  「あの、どちらさまですか?」  「あ」  肝心な自分の身元を言っていなかった。  果歩は隼人の「落ち着いて」ポーズを見て、勇気をもらう。  (ひるむな、あたし)  「ーーー花井果歩と申します。以前、陵さんと親しくさせていただいていました」
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