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「話せば長くなるので、これを見ていただきたいのですが」
慎が通勤バックから取り出したのは、陵の携帯電話だ。
「兄、陵の携帯電話です」
黒い細長い携帯電話。小さな画面が上半分についていて、下半分は数字などボタンがついている。
絵文字やデコメールなど、今のようにたくさん種類のない時代の携帯電話だ。
慎は携帯電話の受信フォルダから、ある一通のメールを選び出した。
「このメールは、僕の兄、陵が911同時多発テロから1週間後、アメリカから帰国したときにくれたメールです」
「読んでいいのか」
社長の問いに慎がうなずく。
「兄の携帯ですけど、僕あてのメールですから」
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