♠会社

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 社長は自分と慎のコーヒーを入れてデスクに置いた。  「……ありがとうございます」  社長はゆっくりとコーヒーを飲んだ。その間、電話が鳴って、社長が応対をする。  ハイ、ハイ……と返事を繰り返し、「ではまた」と単調に応対している。  電話を切って、社長は慎に言った。  「そろそろ皆にもどって仕事をしてもらわないとな」  「すみません……呼んできます」  きっと同僚たちは、共用スペースの給湯室で時間をつぶしているだろう。  「沼田」  「はい」  「花井さんには沼田から電話してくれ。花井さんは陵さんに会いたがっている」  「ええ……そうですが、僕は、沼田家に出入り禁止でして僕が話しても稔に断られるでしょう」  「だから花井さんが沼田家を訪問するときに同行すればいいんだよ。花井さんを稔さんも締め出すことはないだろう」  慎は果歩のことを思った。果歩は必ず陵に会おうとするだろう。  自分は?  陵に会えるのであれば、会いたいだろうか。  沼田家に出入り禁止になっているのは、本当だけれど。
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