♠会社

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 (俺が果歩さんと共に陵に会う)  今まで、稔と仲が悪いことを理由に、陵から逃げていたのかもしれない。  いや、逃げてきたんだ…。  今の陵の状態を人づてには聞いたけれども、実際には知らない。  陵の姿を自らの目で見ることは慎にはとても怖かった。  (ひとりでは、俺は陵に会えなかっただろう)  「花井さんには僕から今夜、連絡して説明します」  「おう」  給湯室に向かう前に、社長に慎は頭を下げた。  「……できるなら、僕も花井さんと一緒に兄の所に行かせていただくかもしれません…ご迷惑かけます」  果歩と一緒ならば、自分も心強い気がする。  それで陵のケイタイを黙って持ち続けたことが、許されるわけではないけれど。  社長は果歩との話のメモを慎に渡して、言った。  「便利屋として、今度は相談料金をいただくよ」  社長のバーコード頭が秋の日差しに照らされて輝いている。  それは社長の今までの人生においての苦労を表しているようだ。  今日の慎には、それがいつもより増して、とても眩しかった。
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