♥の苦悩

2/10

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
   今宵の月は満ちている。満月が空高く昇る頃。  果歩と隼人は池袋のカラオケ店に入った。  2人はルームに入るなり、荷物を投げ出す。  完全にリラックスモード。手際(テギワ)よく、店員に料理を頼む。  「隼人の好きな唐揚げ頼むから、サラダ注文していい?」  美容に気を遣う果歩には、サラダは欠かせない。  「適当に好きな食べ物、頼みな。俺はジンジャエールね」  言いながら、隼人は予約のリモコンを離さない。  歌うのは専(モッパ)ら隼人だ。  ボクシングをしていた頃、食事制限のうさをカラオケで晴らしていた。  だから隼人は歌のレパートリーが多い。  「さぁ歌うぜ!」  曲のイントロが流れて、隼人は勢いよく立ち上がった。  (ノリノリだな)  曲のサビのところで、店員が飲み物を運んできても、ひるまず堂々と歌いあげる。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加