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しかし、この少年の情報が"渡されることはなかった"。『力』についてはもちろん、その少年の出身、動機、年齢、ついには名前までもが。
小耳に挟んだ情報では、七瀬光紀とこの少年は知り合いだそうだが、その関係で情報が滞ったのかとライナは思ったが、
(いや・・・・それはないはず。だとしてもあの方がたかが一人の男相手に気を利かせるとも思われない。だとしたらそれ以上の存在が関わられている?どちらにせよ、上層部を動かせるこの少年はただ者じゃないな)
そんなことを考えながら少年に質問されたライナは聞き返す。
「?どういうことなのですか?」
急に突拍子な質問をされ戸惑う。ライナは思わず聞き返していた。しかし少年は黙ってライナに背を向けた。
何も答えない。
まるで答えはもうわかるでしょ?と言ってるようだった。
あの、とライナが話しかける。
「あ、そうだ向こうってどうなってるのかな?楽しみだね」
少年は笑いながら言葉を遮った。青年が言った言葉を揉み消すように、最初からそんな話題などなかったかのように。
ライナは少し苛立ちをみせるように短い髪を掻きむしる。そしてぶっきらぼうにさぁ、と返事をする。
そんな青年の方を少年は振り返る。それと同時に地面からいきなり魔法陣があらわれた。
それは彼らの会話をさえぎるようにちょうどいいタイミングで。
それはまるで少年がこの魔法陣(ぐうぜん)を望んで起こしたかのように。
青年のなかでなにかが告げるこのまま『向こう』にいってはいけない、と。
しかしそんな青年の願いは叶わない。
急に魔法陣が輝きだし、辺りはまばゆい光に包まれる。
「今日なんてこなきゃよかったのに・・・・・」
少年の言葉をライナは聞き取ることができなかった。しかし何を言ったかは分からなかったが見えない光のなかで少年の表情は見えた気がした。
少年の声はとても沈んでいてポツリと呟くようなものだったから。
全てに絶望したかのような声。
そして光が消え元の河原に戻る。
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