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翌日、僕は学校の屋上に向かった。まだ誰も来ていない。誰も僕に気付いていない。
誰にも気付かれないうちにと、飛び降り防止用のフェンスをよじ登り、反対側の狭い足場に降りる。
地上五階。もしかしたらこの高さでは目的を果たせないかも知れない。だがここじゃないといけない。
ここが始まりなんだ。いや、すでに始まっている。僕は六人目だ。
ふと、学校の校門を一人の女子生徒が通った。
一人しかいない。だが、これからも数は増えるのだ。もっと多くの人間が救われるためにも、一歩を踏み出す。
全身で空気を感じられる。まるで僕に羽が生え、墜落する寸前には飛べるのではと錯覚した。だがそれはない。それにここで飛べば、僕は救われない。僕は僕のために。そしていろんなことに苦しむ人たちのために。
女子生徒が僕に気付いた。頭から落ちる僕に。
彼女の顔は、一瞬にして驚愕、そして恐怖の表情へと変わった。
彼女が悲鳴をあげるのと、僕が赤煉瓦の花壇の角に頭から落ちたのはほぼ同時だった。
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