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俺の名前を呼ぶ声のするほうを見ると、先ほどの話の少女、神崎愛美の人差し指が俺の左頬に触れた。
「ふふ、引っかかった」
「お前、ホントやることがガキっぽいぞ」
今の俺の言葉で、満面の笑みで喜んでいたのが一変し、両頬を膨らませ、あからさまに不機嫌な顔になった。
「な、なによ。子ども心を忘れまいとする私をバカにするの?」
「おい、それだとお前が不機嫌になるのは間違いだろう? ガキっぽいと言われたら喜ぶべきだぜ」
「へ、減らず口!」
そう言って先に帰ろうとする彼女の手を、俺は無意識のうちに握っていた。
当然彼女は驚いた顔でこちらを見ている。
「どうせ隣なんだから、先に帰ってもしょうがないだろ」
とっさにそう言っていた。こんなこと、言ってはいけないのに。
「なんで?」
俯いて、彼女は呟いた。
「なんで相馬くんは、そんなこと言うの?」
「……悪い。こんなこと言うつもりはなかった――」
言いかけて、窓の外を何か大きなものが落ちたのを見た。鳥なんかよりも大きな、飛んでいるわけでもなく、ただ落ちている。
窓の側に行き、鍵を開けていると隣に神崎が寄ってきた。
「どうしたの?」
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