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愛犬のマルサ(15歳の雑種の雌、会話の出来ない子)が死んで3ヶ月程経った、確かに寂しかったさ……けどよ、長年連れ添っていた彼女にフラれ、仕事はクビになり散々だった、やっぱりマルサが居てくれたおかげだったのか……
一気に何もかも無くなり失意の中、俺は家の中で腐っているのがいけないと何故か思い、公園に出掛ける事にした。
久々に浴びた朝日は心の奥まで染み込み、少しは気分転換になったと思う、ぶらぶら歩いていたが丁度良いところにベンチがあったからそこに座り、ぼーっと公園内を見る。
子供は元気に走り回り、母親は他の親達と雑談をしていた、こうも世の中は平和だったのかと改めて再認識していると背後から生臭い、熱い空気を感じた。
いや、待て、俺の知り合いにこんな生臭い息の持ち主は居ねぇぞ、確かに40間近だったら口臭の気になる年頃だが流石にこんなのは居ねぇ、冷や汗をダラダラ垂らしながら俺は覚悟を決めて振り返る、そこに居たのは……
「オッサン、お前なに辛気臭い面してんだよ」
「……はい?」
「お前だよお前、30半ばの男が辛気臭い顔してて楽しいか? 嫁無し金無し意気地無しか? それとも嫁無し金無し仕事な――」
「あー! 聞こえねぇ、何も聞こえねぇ!」
「はっはっはっ、人間の分際で俺様の話を聞けねぇとは笑いもんだなぁ」
一面真っ黒な毛むくじゃらが話をしている、いや、多分犬だ、絶対犬だ。
背後に居たの犬が饒舌に話しながら俺の隣に座りケラケラ笑っている、しかもかなーり俺の事を馬鹿にしているだろう。
「おい、オッサン」
「俺はオッサンじゃねぇ」
「んじゃニートか、新種のニートなのか?」
「……お前な、言って良いことと悪いことがあるのわかるか?」
「知らんな、オッサンは人間で俺様は犬だ、犬の世界で言っちゃ悪いことなんざ無いかなら」
そういうとベンチの上で器用に丸まって横になると馬鹿にした顔で俺を見てくる、いやいや、犬に馬鹿にされる人間なんざ見たことも聞いたこともねぇよ、それに俺は馬鹿にされる為に此処に来たんじゃねぇ。
「おい犬公、お前主人居ねぇのか、それとも脱走してきたか?」
「はっ、馬鹿じゃねぇか? 俺様は此処を根城にしてる野良だっつーの、お前は社会から見放された捨て犬もとい捨て人間じゃねぇか」
「……言うな、それだけは犬なんかに言われたくなかった」
「はっはっはっ、俺様の様に自由に生きられねぇのは哀れだな」
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