匡輔、玉城にたつ。

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迷った。 何この高校、広すぎだろ。 胸踊る入学式に舞い上がり、2時間以上前に来てしまった僕は、時間潰しがてらの、学内散策をしていたわけだ。 しかし、「東京ドーム何個分」なんて表現をされそうな敷地を初見で歩き回るなんて安易すぎた。 そもそもなぜ2時間も前に来てしまうのか、今さら自分の行動を悔やみながらうろうろしていると、目の前のベンチで本を読んでいる女性を発見。 僕は、初めてであった人に安堵と、救いを求めて声をかけた。 「あの、すみません。」 その女性は、不意に声をかけられたことに一瞬驚いたようだが、こちらに目を向けると、ほっとしたように返事をした。 「何か用?」 僕と似たような女制服を着ていることからここの生徒というのはすぐわかったのだが、黒髪を腰辺りまで伸ばし、その大和撫子のような端正な顔立ちにドキリとした。 「ちょっと迷ってしまって。ここはどの辺りになるんですか?」 恐らくこんな時間に来る新入生は、僕くらいだし、きっと在校生と予想して質問をしてみた。 「E館裏辺りかな。君、新入生だよね。 ダメだよ、あんまりうろうろしちゃ。」 やはり在校生。 しかもかなり大人な対応。 「ごめんなさい・・・。」 当然とも言える指摘に、ただ謝ることしかできなかった。 僕、情けねぇな。 「ハハッ、謝られても困るなぁ。それよりもここどこか言われてもわからないでしょ? とりあえず、1年生校舎のC館まで案内するね。」 そういって立ち上がった彼女は、僕の手をとり歩き出した。 端から見れば、『リア充氏ね』なんてフレーズが浮かぶが、実際は引率される保育園児のような扱われ方だった。
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