匡輔、玉城にたつ。

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案内されている間に自己紹介。 彼女の名前は、北条 茜。 クラスは2年D組。 入学式の準備を抜け出して、本を読んでいたところで僕に声をかけられたようだ。 僕も一応の自己紹介をしたが、その間も手を繋いだままで、一応離してほしいといったのだが、 「また迷子になっちゃうからだめ。」 と拒否された。 僕が田舎から上京してきたこと、 独り暮らしで少し不安が残ること、 部活動は何にしようか、 そんな他愛もないことを話ながら歩いていた。 「へぇ、一人暮らししてるんだ。お姉さん感心しちゃうな。」 「そこまで誉められることですか?」 「そうだよ、高校生で自炊なんてあまり聞かないよ。」 「でも、不安ですよ。 今のところ相談相手もいないですし。」 「そのときはお姉さんが助けてあげるから、安心しなさいな。」 「ありがとうございます。」 彼女の好意に感謝しながら歩みを進めていくと、目の前に人だかりを見つけた。 「はい、到着。もう、うろうろしちゃだめだよ。」 彼女は繋いでいた手を離し、その手で僕の頭をポンポンと叩きながら言った。 「じゃあ、わたしはいくから。入学式、頑張ってね。」 そういうと、来た道を引き返し始めた。 「本当に、ありがとうございました。」 ぼくがそう言うと、彼女はヒラヒラと手を振りさっていった。 きれいで優しい人だったが、終始僕の事こども扱いしてたな。 でも今度会ったらちゃんとお礼を言わないと。 彼女の手の柔らかさの余韻と、妙な胸の高鳴りを抱えながら、僕は目の前の人だかりに紛れていった。
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