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23時38分。
夜の繁華街は、眠気がさめるほどの光であふれている。
しかし、蛍光灯の明かりはなぜあんなに疎外感を感じさせるのだろう。
お前はここに入ってくるなと言わんばかりのようだ。
お前は明かりのある場所にいるべきではない、と。
とても高圧的に。
加えて、人々の多さには少々あきれるところもある。
茶髪と金髪が入り混じった男女の集団。スーツ姿の中年男と制服の少女。地べたに座り、ビール缶と煙草の吸い殻をまき散らしている若者たち。
たくさんの人間。
たくさんの顔。
たくさんの声。
たくさんの匂い。
俺は向かってくる様々な人間と肩がぶつからないように、革ジャンに両手を突っ込みながら歩く。
こんなにも人であふれているのに、人々は交わることをしない。
それぞれがそれぞれのテリトリーを持ちながら他人とすれ違っている。
これは驚くべきことのような気がする。
秩序の中で生きることは、清潔でありながら、どす黒い。
しかし、どす黒さを感じさせることなく、人は人とすれ違っているのだ。
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