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俺と背の高さが同じ茶髪の客引きと目があった。
長袖をまくり、無造作に整えられた茶髪からはピアスが覗いている。
ボーイの格好は、彼にはあまり似合ってはいないように思う。
なんというか、彼自身、ホストの格好の方がさまになるのではないだろうか。
「お兄さん、ちょっとどうですか?」
にたりと口元を歪めながら近づいてきた。
俺は彼の存在に気づかないふりをして足早に通り過ぎる。
いろいろと面倒なことになりかねない。
初めてここを訪れたときにも散々な目にあった。
背後から舌打ちが聞こえた気がした。
人の声があふれかえるこんな場所では、彼の舌打ちなど簡単にかき消されてしまうのに。
他人の悪意というものは、受け取りたくなくとも自然に耳に届いてしまうものなのだろう。
彼には悪いが今日の俺の目的は、一時的な快楽に金を払うことではないのだ。
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