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砂漠の間を出たそこは、比較的明るい回廊だった。
解放的な砂漠が原に比べ、室内独特の圧迫感がある。
「うっわ!」「何!?」
瞬間、足元が揺れた。腸が動くような重低音が辺りに木霊した。
地震はすぐに止んだが、大和が背後の異変に気づいた。
「……扉の向こうが、消えている」
梢も、レンガ調の秀石になった元砂漠の出口を見つめた。
「やっぱり、常に移動しているのね。是、部屋たちが」
「っつぁ。どうなってんだよ、一体、僕達ん家は」
「屋敷内のソナーシステムは生きている様子でした。せめて、ガットディスプレイがあれば……」
「よいではないか。みなぎるようなものばかりが並んだ道ぞ」
皆が口々に、思いを口にする。
小さな桜が、大和を見上げた。
「おい、大和。桜を肩車せい」
「……お前、室町の生まれだそうだな。肩車なんて言葉、あったのか?」
「そのムロマチというのはよくわからぬが、さあな、忘れた。その肩に、桜を乗せるのじゃ」
「支離滅裂を形にしたような女だな」
大和なら絶対に断る。桜以外の誰もが、幼き暴君に同情した。
「え? 大和……様?」
しかし、あろうことか、大和は桜を抱きかかえ、その肩に彼女の脚を乗せたのだ。
「そんな嘘だろ、大和。もしかして、腹減りすぎて、さっきの砂漠で、砂でも食ったのか?」
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