40430人が本棚に入れています
本棚に追加
/411ページ
桜が運転した車によって、迷宮の脱出が可能になっていたのだ。
「ここから行くといい光、桜さまも」
眼帯の当主、匠はその場を動かないまま、言葉で光の背中を押した。
匠のその様子に、光は疑問を抱く。
「匠さまは行かないのですか?」
「ふむ。この自動車は大変興味深い。少し触ってみたいが構わないな?」
片目の先に、破損し煙を吐くHUMMERがあった。
「も、問題はありませんが……」
匠が車から屋敷の方角へ視線を移すと、光もそれに続いた。
「それにあの屋敷も大変興味深い。超時空……超空とでも呼ぼうか。この自動車を触ったら、もう少し外装を見て回るつもりだ」
「……承知しました」
一緒に行く理由も止める理由も今の光には無い。
「ふむよ、何故桜にも行けと命令する?」
怪訝な顔の桜に、匠は屋敷の方角を指差す。
「あの中に、貴女様のお部屋もご用意しております。招待状は?」
「これか?」
匠の問いに、桜は懐のふくらみから1枚の手紙を取り出した。
すると匠も白衣から手紙を取り出す。
大きさも白の透明度も。2枚の手紙は同じものだった。
その内容も、文字の美しさも。
最初のコメントを投稿しよう!