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「結構。その手紙の差出人もあの中で待機しております故」
「ほう。神が来るのか。ならば行こう」
匠の言う差出人と桜の言う神が同じかは、その場にいる誰にも分からない。
眼帯のくせ毛は、光へ優しく微笑む。
「神や仏の類は信じぬが、試練の突破を祈るぞ光」
「何をしておる光。行くぞ」
桜は既に扉を開け、光を今かと急かしていた。
「それでは匠さま、失礼致します」
その黒髪を揺らし、光が一礼をすると、眼帯の当主は手のひらを見せた。
「ふむ。どうせまたすぐ会える」
二人の少女が向かう先に、奇少物件と呼ばれた屋敷があった。
今は雪に覆われている。
だが、その屋敷に触れた部分はにわかに溶け始めていた。
誰もが気づく。
屋敷だったソレそのものが、熱を持っているのだ。
今この瞬間も、ボコボコと音を鳴らし、内包にて動く蛇の類を想像させる。
生きた屋敷。
「奇少物件 長門陣……か」
匠の呟き通り。
光はその模様に悲鳴を上げた。
たったの一時間前。
八名八問を突破し、長門を破滅まで導いた男がいた。
その想い人を心に浮かべ、光は迷宮から超空へ。
不気味に躍動する屋敷へ歩き出した。
その屋敷、いや、その生物は不気味に蠢(うごめ)く──
──球体となっていた。
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