戦場羅間の章

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長門家三代目当主、尊の試練を突破し、ソルトカメオを手に入れた光、慎、そして桜。 景色なき縁側を抜けると、無骨な石によって積み重ねられた、石壁の回廊となっていた。 薄暗く、気温も低い。 先頭を進む桜の鼻が、ヒクヒクと動いた。 「冷えた石……いや、血の臭いがするな」 「血、でございますか?」 周りに鼻を向け、クンクンと鳴るす光。しかし、桜の言う血の臭いなどしない。 「っつぁ。歴代の当主は五感も優れてると聞いたことがある。その生意気な女が、本当に初代っつうなら、の話だけな」 尊の間を出たころに、慎は光からことの経緯を聞いていた。 どこか疑うような目線で見る慎に対し、桜は特に気に止めた様子もない。 「見えたぞ」 やがて明かりとともに、大きな鉄の格子が見えた。  
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