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確かに、現れた男の格好は黒いタキシード。
だが通常よりもボタンが多く、本来の物を着崩している。
桜へ歩み寄る歩幅は広く、身長の高さと洗練された身のこなしを感じさせた。
背中はペンギンの花婿を思わせる長い二股の丈で、全身に薄いストライプが入っている。
風変わりな執事ではあるが全身からは独特の清潔感がかもし出され、特筆すべきはその容姿だった。
美麗な鼻元に、薄い青の瞳。
黄金率で描かれた顔に、髪はよく手入れされたシルクの金を彷彿とさせ、豪華な額縁を思わせる。
作品に近い造形美。
それが、ドレッドノートという執事の容姿だった。
「貴様。桜と同じ言葉を話すが、葡の者か?」
「ぽ? まさかポルトガルのことかい? ちゃうちゃう。俺はイギリス人の血が半分入ったハーフさ!」
「いぎ……しかも混血だと? 桜以外にも外の国と交易を交わす者がいたのか……」
「ウップス! そうだ思い出した! それより俺と一緒に来てくれカマン!」
桜に手のひらを見せるドレッドノート。
普通なら初対面から軽薄な執事に、警戒心を抱くかもしれない。
しかし、彼女は違った。
「そうか。では案内せい」
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