埃及砂原の章

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「歩けども歩けども砂! 砂! 砂!」 青海のような空に、しゃがれた青年の声が浮かんで消えた。 「灼熱の砂漠、ずーと砂漠だぜ! どーなってんだよ一体!」 慎の言う通り、この砂漠に突入して既に1時間が経過していた。 光、慎、梢、そして桜の4人は変貌した我が家の謎の答えを求め、第二の間、立の部屋をあとにし、この砂漠の間に訪れた。 そこは室内にも関わらず、清々しい青空と殺人的な太陽が昇る室内砂漠だった。 「ここは十三代目長門、常(つね)様の治める埃及砂原(えじぷとさはら)であることは間違いないのだけれど……」 袖で汗を拭く光に対し、ワイシャツで顔を隠す梢が言う。 「この間は、あの太陽の光と砂漠の景色の絵、そして砂そのものの凹凸によって、目の錯覚を利用している。部屋そのものが騙し絵。是、絶対」 「はい。実際は47万平方メートルほど、東京ドームとほぼ同じ敷地のはず」 「いや、おかしーだろ。どう考えても向こう側が見えねーし。つーか暑すぎるしよー」 喉にしたたる汗を拭き、慎は太陽の向こうを睨んだ。1秒も睨めば、目がチカチカと麻痺する。  
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