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扇子で顔を隠した信長と濃姫が向かい合って座っていた。
「ねーお濃」
「なぁにあなた?」
「親父死んだんだけど」
信長は扇子をずらし、片目で濃姫を覗く。
「な、なによいきなり…」
「いやぁーどうすっかなー。家督継いだけど何したらいいか全然分かんないよ」
「…ほんっっと馬鹿ね貴方」
「そんなこと言ったって…」
「今まで信秀公がされてたことをすればいいのよ…」
濃姫は頭痛を感じて額に手を当てた。
「いや俺舞ってばっかいたからほんと分かんない」
「人生五十年ーって?」
「うん」
「食い違いは仕様って言い訳したから何でもありだと思ったら大間違いよ。それはもっと後でしょう」
「分かんない分かんない何にも分かんない」
「疲れる…。離縁したいわほんと…ってか殺したいわ」
馬鹿な旦那に濃姫が剣呑な光を目に宿したその時、男が部屋に入ってきた。
「失礼致します」
背の低い男が濃姫に頭を下げながら隣に座る。
「え、お前誰」
信長はキョトンとする。
「猿めにございます」
「あー猿かぁ。この禿げねずみめ」
信長は戯れに罵倒していたが嫁は小刻みに震えていた。
噴火の兆しである。
「だからああ!なんで!お前がいるのよ!歴史好きに怒られるでしょう!今は1551年!あんたが来るのは三年後!」
なぜかキレた濃姫にビビりまくる信長。
「ま、まままままあまあ良いじゃんよ。と、取り敢えず用件聞こう?いや聞きましょう?」
「くだらない用だったらあんた達歴史から消すからね」
「お濃様申し訳ありません。この馬鹿をお濃様一人に任せるのは酷かと思って…」
「前言撤回。あんたは居ていいわ。たった三年ぐらいには目を瞑ることにする」
「助かります。で、殿。大事で御座います」
「えっ、なに?悪いニュース?」
「悪いニュースです」
「えー聞きたくないんだけ……聞きます」
濃姫の鋭い眼光が信長に突き刺さる。
「殿、どうか冷静にお聞きください。斯波義統公からの書状を読んだのですが大変な事が書かれていたのです」
「つーかなんでお前が読んじゃうんだよ」
「なんと織田信友公が殿の暗殺を企てているらしいのです…!」
「マジで?え、ヤバくね?俺終わりじゃね?尾張だけに」
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