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「S・U、す。はい」
「…す、す」
「K・I、き。はい」
「…き、…き」
「す、き。はい」
「す、…き。」
「好き」
「す、すすすぅ……す、す…。考君!!言えないよ~」
「あははは」
付き合い始めて、もうすぐ一年。
元々かなりの恥ずかしがり屋な麗奈は、未だに僕に好きと言えないでいる。
言いたいと言うから頑張っているのだが、ダメらしい。
もう少し自分に自信を持っても良いと思うんだけどなぁ。
そういう問題じゃないのかな?
まぁ僕は、言えなくても頑張って小さな声で『す、き…』と練習してる彼女を見ているだけで、十分幸せだから良いんだけどね。
するといきなり、麗奈が顔を近付けてきた。
目を力一杯閉じて、顔が日に焼けたように真っ赤になっている。
うわぁ、…可愛い。
「す、すすす、す、す、すぅうう~……」
……うわぁ、なんかもう、うわぁ…。
これだけで僕もう、なんか、いいや。
「考君~、無理ー!!」
「あははは」
溶けた鉄みたいにカッカと燃えてる麗奈は、湯気が出そうな程恥ずかしがって黙ってしまった。
気まずく感じてるのが目に見えて分かる。チラチラとこっちを見る長い純正睫毛付きの瞳が、僕の機嫌を伺っている。
すると麗奈の携帯が鳴った。
あたふたしながら麗奈が出ると、クラスの女子らしく僕に隠しもせずに話し始めた。
「あっ、香奈?うん、そうだよ。ん?あった!?本当に!!?」
そういえば大事な耳飾りを無くしたとか昨日落ち込んでたな、なんて推測しながら、麗奈の声を聞きながら黙っていた。
「ありがとう~!!あれ考君に貰ったやつなの」
あぁ、あれか。
「筆箱に入ってた?そっか~。本当にありがとう。香奈大好き!」
…あれ、友達ならさらっと言うな。
「うん、うん。ありがとう、うん。分かった。じゃあ明日ね。うん、ばいばーい」
ここには居ない溝端に手を振りながら電話を切った麗奈は、ちょっと落ち着いた顔で振り返った。
「ごめん、よし。続けよう!」
…無意識みたいだな。
「考君!す、すすす、…すす、す!」
…あぁ。
この子、本当に僕が好きなんだなぁ。
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