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「行かないから。学校なんて行かない」
「お前なあ」
この期に及んで、まだそんなことを言うか。呆れ果て、その台詞も喉を出ない。
何とかして機嫌を取るべきかと思索するものの妙案が咄嗟に浮かぶはずもなく、嫌だ嫌だ、と駄々をこねる彼女を呆れて見ているしかない。だが、ここまで来たのだから引き返すという選択肢は無いに等しい。
結論、あまりにも頑固なので、僕は最後の手段を決行することにする。できればこの手だけは使いたくなかった。意外と重いから、これ。
「兎に角、始業式くらい来い」
「え、あ、わっ」
荒療治だが、僕はいじられていたノートパソコンを奪うと同時に、彼女襟首を掴み、やや強引ながらも外に引きずり出す。慌てて咲は襟首を掴んでいた僕の手を払い除けるが、生憎ノートパソコンは未だこちらの手の中だ。
「ちょっと。パソコン返してよ」
「ああ、返すよ。長時間これ持ってたら重いしな。まあ、今日学校に行くんだったらの話だが」
「うっ」
パソコンを人質に取られたからには咲が僕に逆らえるはずもない。何せネットは彼女の生活スタイルの一環なのだ。こうでもしなければ梃子(てこ)でも動かないことを僕は熟知している。
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