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初速のみでいえば、10式2型の搭載する120mm55口径砲の方が上であるが、こちらはタングステン弾。
一方、M829A2は高密度を誇る劣化ウラン弾。
密度が高い分、それだけL/D値を多くしても質量損失が少ない弾丸だ。
運動エネルギーは同等か、ややこちらに分がある方だ。
複合セラミック装甲を相手にするために造られた弾丸だ。
旧世代の鋳造鋼板が勝てる筈もない。
〈3番車が吹き飛んだ!〉
〈7番車被弾、爆発!〉
〈2番車も被弾!〉
〈6番車、蒸発〉
地獄絵図とは正しくこの事だ。
一方的に降り注ぐ弾丸。
吹き飛ぶ砲塔。
砲弾が勿体なくなったのか、今度はアパッチが30mmチェーンガンを放つ。
本来、30mmチェーンガンは戦車に対しては無力な筈だが、所詮はこの時代の戦車だ。
車体上面に当たった弾丸は容易く装甲を貫通し、内部を滅茶苦茶にする。
誘爆する弾薬。
榴弾も誘爆したのだろうか?
盛大な爆炎と共に1番車が吹き飛んだ。
砲塔は20メートルはあろうかという高さまで舞い上がる。
成す手無し。
敗北を悟った日本兵は、一斉に戦車から飛び出した。
しかし、その頃には既にM4だの、M6だのといった戦車が到着。
ハッチから戦車長が顔を出すと、機関銃に手を掛け、トリガーを引いた。
吹き荒れる銃弾の雨。
四肢が奪われていく……
「クッソ……」
俺達は、その様子を平然と見るしかなかった。
助けようにも、向こうにはエイブラムスとアパッチがいる。
それだけで俺達にとっては脅威としか言いようがない。
こちらからも手を打つ事は出来るが、今ここで戦力を減らす事は得策ではないだろう。
どこかで機を待つしか……
「3佐、自走砲は打たないのですか?」
下から聞こえたのは宮島の声だ。
宮島もモニターからの映像を見ているのだろう。
「今は上空にF-35がうようよしている状態だ。
それに、アパッチもいる。
撃った瞬間位置がバレて返り討ちだ」
上空を眺める。
俺達を攻撃する機会をうかがっているかの様なF-35C。
しかし、攻撃してこない。
いや、これは時間調整?
そう思った時、F-35Cの編隊は海へと進路を採った。
向かった先は……艦隊だ。
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