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日本国東京都新宿区市谷本村町5ー1防衛省庁舎A棟5階大臣室。
プルルルル。プルルルル。
やたらと高級そうな机の上にひっそりと置いてある非常回線の電話が鳴った。
それまでソファーで寝ていた防衛大臣がゆっくりと電話の受話器を取る。
「朝早く申し訳ございません」
年配を思わせるしわれた声が電話口から聞こえる。
「遂に始まったか」
寝起きの大臣は電話の向こう側が目的を話す目に何かを悟ったかのように話した。
「はい
残念ですが・・・」
弱弱しく僚長が静かに話す。
「まぁ良い。
詳しい報告は官邸に送ってくれ。
私は今から首相官邸に向かう。恐らく総理も非常事態宣言の準備をしているだろう」
「小谷大臣。
すみません。
私たちの力不足で・・抑止力になれなかったことをお詫び申し上げます」
「君が謝る事ではない。
左翼に勝てなかった我々政治家の罪だ。
君たちは尖閣以来様々なことをやってくれた。
ありがとう。
これからも頼むぞ」
穏やかな声だった。
「そんな・・もったいないお言葉を・・言っていただけて光栄です。
では、すみません。
こちらも慌ただしくなるので切ります」
そういうと電話口から小さな受話器を置く音とその後の通信が終わった事を示す機械音が耳に木霊した。
小谷も一旦受話器を置くと隣にある電話を取り、ゆっくりとかけた。
「私だ。
至急官邸まで車を出してほしい」
言いたい事だけ言うと受話器を切った。
すぐさま机の上のビジネスバッグを手に取る。
中身を確認し、出掛ける準備を整えた。
ふと時間を見る。
「今」は人々の寝静まる午前5時5分だった。
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