雷跡15 霧の向こう

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隊長が頭を抱えている理由。 それは、未だ戦える筈の米軍が武器を放棄して撤退している事だ。 散らかったゴミ等からもつい最近までここに米兵がいた事を物語っているが、殆どいない。 「米軍は此処を放棄したのでしょうか?」 とりあえず思った事を口にしてみる。 「馬鹿いえ。 米軍は現在物資が枯渇状態なのだぞ。 そんな状況下でこれだけの兵器を放り捨てて撤退等出来るか。 そもそもマウナケア山はこのハワイ諸島を攻略する上で非常に重要な場所。 そんな所をみすみす放棄する筈がない」 確かに正論だ。 だが、そうだとしたらこれをどう表現する。 まるで、人だけが消え去った様な砲兵陣地。 小銃は無い物の、機関銃も生きているのがいくつかあるので十分抵抗は出来る筈だ。 これだけ立派な陣地を放棄するとなれば、やはりこれは戦略的撤退か? だが、それをするだけの理由は思い浮かばなかった。 その時、誰かが走ってきた。 通信士だ。 「岡本隊長、緊急電であります。 指令部より全部隊に撤退命令が下りました!」 息を荒げながら報告する。 一瞬、俺は通信士の言っている事が理解できなかった。 頭の中で何度も言葉がいきかい、ようやく理解する。 「はっ!?」 俺が言葉を発する直前に、隊長から声が出た。 「撤退命令が……」 「はっ!? なんで!?」 目を見開いている。 ここまで素で驚いている隊長も珍しい。 「いえ、理由は…… しかし、確かに指令部より撤退の命令が…… ですが、偵察隊だけは偵察を行う様にと。 それと、UAVがフル稼働するらしいです」 「UAVが!? 何かあったのか?」 「分かりません……」 「・・・・」 絶句、という言葉が相応しいのだろうか? 隊長はだまりこんでしまった。 「――分かった。 偵察部隊の駐留は認められているんだな。 じゃぁ、マウナケア山付近の偵察を名目に命令を拒否しろ。 丁度この近くには偵察部隊がいないから丁度いい」 「了解しました」 一礼した通信士はくるりと体を翻すと、無線機の置いてある外に向かった。 その背中を眺める隊長。 何か考え事でもしているのだろうか? 「よし。 とりあえず、状況を確認しよう。 万に一でも、事態が起こるとは思えないが……まぁ、杞憂であると信じよう」
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