雷跡15 霧の向こう

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どうやら何かしらの心当たりがあるらしい。 俺も隊長について行き、地上に出た。 地上……といっても、此処は山なのだが、そこからは辺り一目が見回せた。 南国の午後の日差しが照りつけるが、標高が高いためそれほど熱くない。 先程まではあちらこちらで砲声が聞こえていたのだが……今は銃声1つしなかった。 静かだ。 マウナケアの山麓は火山な事もあってか開けた所になっており、所々に煙を上げる塹壕や車両が見える。 遠くにはハワイ本島を東西に分断するマウナロア山があり、あの近くまで戦線が伸びている筈だ。 実際に攻撃ヘリ部隊が見える。 恐らくその下に機甲科部隊がいるのだろう。 護衛だ。 ヘリの飛ぶ向きからして撤退しているのだろうが、やけに静かだった。 そんなハワイを隊長は必死になって見回している。 「隊長、どうかなされたのですか?」 俺にも違和感はあったが、こういうのは隊長に聞くのが良い。 「分からん。 だが、何かがあったのは確かだ。 様子がおかしい」 どうやら隊長でも分からない様だ。 そんな時、隊長の目つきが変わる。 「全員静かに!」 号令と共に辺りで作業をしていた隊員達が一斉に止まった。 耳を澄ませる。 聞こえるのは、そよ風の音と遠くを飛ぶヘリの音。 いずれも聞きなれた音だ。 いや、待て。 何かが聞こえる。 ノイズ? いや、違う。 ヘリの音に混じって何かが…… 「あそこだ!」 叫ぶ声。 隊長の指差す先に何かが見えた。 ほぼ真南。 マウナロア山の稜線のすぐ上だ。 黒い点の集団が見える。 しかも、移動している。 とっさにポーチから小型の双眼鏡を取り出すと、目に押し当てた。 レンズで広げられた景色の先。 そこにあったのはブーメランの様な形をしたものだ。 平べったい形状で灰色の飛行体。 明らかこの時代の物ではない。 その飛行体が、明らかにレシプロエンジンではない、ジェットエンジンの音を響かせながら飛んでいた。 「QA-47B!? なんでこんなところに! いや……やっぱりだったか……」
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