雷跡15 霧の向こう

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俺も……いや、その場にいた全員の表情が強張った。 茫然と見つめる中、無人機の編隊は地面に沿う様に低空を取り、西へと進む。 「基地をやるつもりか……指令部に報告しろ!」 「もうしています! ですが、回線が込み合っている様で繋がりません」 「くっ!」 地団駄を踏む隊長の音。 1分もしない内に編隊は目前まで迫っている。 「防空隊は何をしている! クッソ、全滅するぞ!」 急速に迫る距離。 その時、基地から白煙が上がった。 地対空ミサイルだ。 「間に合っ……」 しかし、そのミサイルが届く寸前で無人機か黒い塊が落とされた。 次の瞬間、無人機は爆散。 だが放たれた塊は放物線を描きながら地面に吸い込まれ…… 爆散。 高々と舞い上がる黒煙。 弾け飛んだ機材も見える。 そして、双眼鏡に映る破片の中に、人型の物が見える。 いや、人型であったものだ。 効力射で砕け散っている。 「アメ公め。 500ポンドを使ったか。 絶対に許さない……」 基地上空を過ぎゆく無人機の編隊。 燃料に引火したのだろうか、爆炎が舞った。 上陸直後に応急的に作られた仮設指令部を潰すには十分な火力だ。 第2射、第3射と地対空ミサイルを食らい、数は減っていたがそれでも無人機は無人機だ。 地面に張り付くように飛び、そのまま稜線の向こう側へ飛んで行った。 「――指令部に通達。 無人機は南西方向から飛来し、北東方向へ消え去った。 それから、物資の調達…… 特にマルヒト(01式軽対戦車誘導弾)とハチヨン(84mm無反動砲)、無かったらLAM(110mm個人携帯対戦車弾)を持ってくるように。 とりあえず対戦車火器だ。 万一通信が通じない場合は伝令を飛ばす様に」 「了解しました!」 命令を受けた通信士は即座に通信をおこなった。 「鴨井、ついてこい。 日本軍と話し合う」 「了解です」 俺達は再び地下に潜った。 地下に潜ると、地下で待機していた隊員や日本兵の姿があった。 先程まで爆音だの銃声だのが飛び交っていたのだ。 さっきの爆発一つとジェット機の音が微かに響いた程度では、あれを見ていない者たちは動揺の一つも見せない。
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