雷跡15 霧の向こう

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それは、米軍側に空母……米海軍は通常動力空母を運用していないので自動的に原子力空母の存在がある事が言える。 そして、俺達が艦隊ごと飛ばされた事を考えても向こうだって艦隊ごと飛ばされたと考える事が普通だ。 更に、戦車中隊の壊滅。 これは恐らく、米軍側に強力な対戦車火力を持った部隊がいる事を示唆している。 対戦車ミサイルでもこれは可能であるが、馬鹿高く、オマケに補給の効かない対戦車ミサイルを10式ならともかくこの時代の戦車に使う事は考えづらい。 従って、敵に戦車……つまりエイブラムスがいると考える事が出来る。 戦車砲弾なら、流石にAPFSDSの様な最新鋭の砲弾は厳しいが、装薬の純度さえあればAPDSやHEAT(この時代でも既に成形炸薬弾頭は存在する)は作れる。 だから隊長は先ほど対戦車火器を用意しろと言ったのだろう。 だが、それ以外にも隊長は推察できている様だ。 「隊長、物資と隊員達が来ました」 声を掛けられる。 すると、すくっと立ち上がった。 「分かった。 各小隊長たちを呼んできてくれ。 全員に言いたい所だが、時間が無い」 「了解しました」 隊員がはしってゆくと、直ぐに各小隊の小隊長が現れる。 隊長の周りを囲むと起立。 敬礼はしない。 戦場なのだから当然だ。 「休め。 姿勢を正したら敬礼を省略する意味がない」 「はっ」 崩される姿勢。 「貴様等も知っているだろうが、現在、米軍側に未来からの介入がある事が確認された。 敵の戦力は確認している時点では無人攻撃機十数機のみ。 しかし、それが艦載型である事、更にその直前に戦車中隊が壊滅した事などから踏まえて米軍側に空母打撃群と陸上部隊がいる事は確実だ。 そこでだ。 我々はこれより米地上戦力を叩く!」 最後の言葉には強い意思がこめられていた。 全員がその意味を理解する。 「現在、我々は存在こそは推定できるものの、何処にどれだけの数の米軍が待ち構えているのかは想定出来ない。 しかし、かといって無駄に貴重な戦力である10式や16式を威力偵察に向わすのは危険すぎて出来ない。 そこで、我々が威力偵察に向かう!」 威力偵察…… 普通の偵察ではない。
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